モンテッソーリこどもの家や、モンテッソーリ教育を行っている保育園・幼稚園を検討されている親御さんが、必ずといってよいほど心配されることがあります。
それは、「モンテッソーリ教育を受けると、協調性がなくわがままな子になる」という噂。
モンテッソーリ教育=わがまま、このワードはよく聞かれますよね。
実際のところはどうなのでしょうか。
モンテッソーリ実施園では、子供達はどのような生活を送っているのでしょうか。
そして、なぜ「モンテッソーリ教育=わがままになる」と言われることが多いのでしょうか。
これらの事を詳しく調べてみたいと思います。
その前にまず、モンテッソーリ教育とはなんぞや、という点をまず押さえておきましょう。
これは、今から100年以上も昔のイタリア、ローマで医学博士をしていたマリア・モンテッソーリという女性が提唱した教育メソッドです。
大人がなにかを教えるのではなく、子供の発達をよく観察し、適した環境を整えることで、
子供は自ら学び、自立発達していこうとする力を育むのだ、という考え方が根本にあります。
モンテッソーリ実践園の特徴として、
子供達ひとりひとりの興味に応じて活動する時間=「おしごとの時間」が設けられています。
これは、自由あそびの時間とは、区別されています。
「おしごとの時間」は、モンテッソーリ教具という教具を使い、ひとりひとりが自分の意思で
活動内容を決め、自分が納得いくまで何度でも集中して取り組みます。
子供達が、自分の活動に集中しはじめると、保育園・幼稚園とは思えないほどの静寂が
訪れるそうです。
また、モンテッソーリ園では年少クラス、年長クラス、などがなく、
年長の子から年少の子までが同じクラスで活動する、縦割り保育になっています。
同じ年齢の子供達が一斉の活動するのではなく、
小さい子は大きい子がやる「おしごと」を見て学んだり、
年長の子は下の子供達に教具の使い方を教えたり、ルールを教えたりします。
モンテッソーリの実践園はどんなところ?モンテッソーリ教育のメリット・デメリット
日本におけるモンテッソーリ実践園は、各園ごとに環境が大きく違うため、
こどもたちの一日の過ごし方もその園によって大きく異なります。
- どのくらい「おしごとの時間」をとり、戸外で自由に遊ぶ時間がどのくらいあるのか。
- モンテッソーリ教具がどれだけ揃えられているのか。
- モンテッソーリ教師の資格をもった保育士がどれだけ在籍しているのか。
- 園庭がどれだけ広く設けられているのか。
入園を検討されている施設があれば、かならず見学に行って実際に確かめることをおススメします。
さて、問題の「子供がわがままになる」と言われる所以はどこにあるのでしょうか。
それは、モンテッソーリ教育のメリットでもありデメリットでもある「個々の尊重」という部分です。
なぜ「個々を尊重」するのかというと、
こどもの発達はたとえ同じ年齢月齢であっても、その子その子でバラバラだからです。
モンテッソーリでは、とにかく発達段階に適した活動をすることが重要視されます。
人と同じことをする必要がないので、「協調性がなくなる」「わがままになる」というマイナスな
イメージがついてしまうというわけなんですね。
モンテッソーリ実践園では、協調性を育んだり、周りの人への思いやりを育むことはできないのでしょうか。
いいえ、そうではありません。
モンテッソーリ園は縦割り保育で、年長の子どもから年少の子供まで同じクラスで過ごします。
まわりの大きな子たちを見て観察して学ぶ目が鍛えられたり、年長の子が小さい子を
助けたり面倒を見たりするなかで、周りへ配慮する力も育まれます。
また、一日中「おしごと」をしているわけではないので、自由に園庭で遊んだり、身体を動かしたり、歌を歌ったりする時間もちゃんとあります。
そのような時間のなかで、他の園での生活と同じように、協調性や社会性を学んでいけます。
一番大きなデメリットだと思われるポイントは、海外と違い日本ではモンテッソーリ教育を取り入れている小学校がほとんどない点です。
モンテッソーリ実施園での生活と、小学校にあがってからの生活環境が、ガラッと変わってしまう部分で、子供が大変苦労する可能性があります。
日本の小学校は、たいていの場合、授業の時間が時間割で決められています。
チャイムがなって、チャイムで終わるのが一般的な学校の授業です。
モンテッソーリ園での「おしごとの時間」は、はじまりも終わりも自分で決めて、
自分の意思で納得いくまでやり続けることができます。
もうやりきった、と思えばその場で終わることもできるのが、モンテッソーリのおしごとなんです。
その違いで戸惑い、小学校生活のスタートをうまく切れない子もいるようです。
就学前にモンテッソーリ教育を受けるメリットとデメリットを以下にまとめてみました。
【メリット】
- 人と比べなくてよい。
- ②意欲的に物事に取り組む
- ③集中力がつく
【デメリット】
- 各園での環境の差が大きすぎる。
- 一般の園に比べて、自由遊びや戸外遊びの時間が少ない。
- 小学校教育との連携がなく、小学校生活との違いが大きい。
では、これらをもとに、どのように保育園・幼稚園・こども園を選んだらよいか
次の項でお話していきたいと思います。
子供がに求めるものは何?モンテッソーリ保育園選びの決め手はここ!
モンテッソーリ実践園は、それぞれの園によって大きく環境が違います。
園選びを行う際は、まずは、実際に足を運んで園を見学することをおススメします。
また、子供の性格・特性によっても、その園が向いているかどうかが変わってきます。
モンテッソーリ園では、先生が「次は○○の時間です。みんな○○してくださいね。」
と指示する場面は、通常の幼稚園やこども園と比べて少なくなります。
もし、お子さんの発達が同じ月齢の子と比べてゆっくりだと感じる場合、
モンテッソーリ園は最高の場所ではないでしょうか。
他の子と同じことをする場面が多ければ、その子にとって苦痛に感じることが増えてしまいます。
でも、その子の発達に合わせて活動をすることを重要視するモンテッソーリ実践園では、
のびのびと過ごせるのではないでしょうか。
モンテッソーリ関連書籍で、子供の頃にモンテッソーリ園で過ごした記憶を振り返る手記を読むと、とても興味深い内容があります。
一番多く見られるのが、引っ込み思案で自分に自信が持てなかったが、モンテッソーリ園に来て過ごすなかで、自分に自信を持てるようになった、という内容です。
これは、自分が納得するまで繰り返し取り組めることで、「できた!」という達成感を感じることができ、低かった自己肯定感が高くなった、と説明できます。
それから、特に気に入った教具を何度も何度も繰り返しやった記憶や、そのときに培った力が
大人になってからの仕事に生きている、という内容です。
教具を使っておしごとをした、ということが、その人にとっての原風景になっていることが
非常に多いのは興味深いですよね。
ただ、先ほども書いたように、注意したいのは小学校教育との違いです。
海外には、モンテッソーリ教育を行う小学校・中学校が数多くありますが、
日本のモンテッソーリ小学校はわずか数校、しかもすべて認可外の小学校で、費用もかかります。
例えば、モンテッソーリ教育がすごく性に合って、園生活が生き生きと過ごせていた子が
急にまったく違う教育方針の小学校で馴染めず、不登校になってしまう、といった事例が
でてきてしまうのです。
子供にモンテッソーリ教育を受けさせるかどうかを決める時に、
親が考慮しておかないといけない大きなポイントではないかと思います。
まとめ
モンテッソーリ教育を受けるとわがままな子になる。
なぜそのように言われているのか、理由がわかっていただけたのではないでしょうか。
モンテッソーリ教育が、個々の発達・成長を尊重する考え方に根付いているため、
そのように勘違いされるのでしょう。
幼い我が子をどのような環境で過ごさせるか、という問題は、どなたにとっても真剣で重要な問題だと思います。
園選びは慎重にしたいものですよね。
私は、近くにモンテッソーリ保育園がなかったので、
通わせやすい近くの保育園に我が子を通わせましたが、
とても環境が良く子供達ものびのびと過ごせたので非常に満足しています。
ぜひ、モンテッソーリ園のみならず様々な施設に足を運んで、実際にそこで過ごす子供達の姿を観察されることをおススメします。