モンテッソーリ教育って聞くと、
ちょっと怖い。とか、
気持ち悪い。とか
独特すぎて、やばい。とか
ネガティブな噂やイメージがありますよね。
そのように言われているのは、どのような子供の様子を見て言われているのでしょうか?
結論から述べますと、
- 「おしごと」と呼ばれる活動中の異様な子供達の集中力と静けさ。
- 「おしごと」で非常に器用に道具を使いこなす子供たちの様子。
- 独特な教具の数々。
この3つが、モンテッソーリ教育が「こわい」とか「やばい」などと言われる要因だと
考えられます。
これはモンテッソーリ教育の話に限らす、すべてに共通することなんですが、
ネガティブイメージがひろがる過程において
最初は、物事のある一部分をさしていたものが、
いつしか物事の全体をすべてそのイメージでまとめてしまう、という現象が起こります。
多くの原因は、その物事の一面からしか知らないために起こります。
これは、人間なら誰しもそうなってしまうそうです。
ですから、ネガティブイメージをつくっている子供の様子や教育メソッドは
モンテッソーリ教育の一部分でしかない、ということになります。
よい機会なので、一部分からはじめてモンテッソーリ教育の全体像を勉強してみましょう。
まずは、「怖い」などと言われる要因になった
モンテッソーリ教育独特の「おしごとの時間」と、そのときの子供達の様子について
詳しくみていきたいと思います。
異様な集中力と静けさをもたらす「おしごとの時間」って何?
とてもわかりやすい資料として、「モンテッソーリ子どもの家」という映画があります。
本上まなみさんや向井理さんが吹き替えナレーションを担当している、フランスのドキュメンタリー映画です。
ご覧になったことがありますか?
これは、フランスでモンテッソーリの教えを忠実に実践している保育園の様子を、2年3ヶ月に渡って密着取材した映像なのですが、わたしもこの映画を観て非常に驚きました。
当時1年生だった娘もいっしょに見ていたのですが、娘がまず言ったことは
「先生はどこにいるの?」
「どうして教室がこんなに静かなの?」
でした。
私達の知っている保育園と言えば、いつも誰かが泣いていたり騒いだりして、保育室内がガヤガヤとしているイメージです。
そして、保育士や幼稚園教諭の先生が子供達の前に立ち、
「つぎは、手あそび歌を歌いましょう♪」と子供たちみんなをリードしているのが普通です。
でも、この映画のなかの保育園は、先生の存在がうすく、一見すると先生がどこにいるのかわからないぐらいです。
実は、先生は教室の片隅でじっと子供達のことを注意深く観察し、なにか手伝いが必要な子供がいた場合のみ、寄り添って声をかけているのです。
そして、子どもたちは思い思いに「おしごと」と呼ばれる様々な活動に没頭していて、
一人も騒いだりする子がおらず、教室がまるで小学校高学年の教室のように静かなのです。
この様子が、「怖い」と言われる所以ではないでしょうか。
これは、子供の「集中現象」といわれる現象で、これは特別な子供だけではなく、
どんな子供にでも現れる現象なのです。
いつもせわしなく動いたり、大声で騒いだりする我が子に、こんなこと無理・・・・
と、思ってしまいがちですが、それは集中現象が現れるような場面やミッションに遭遇していないだけなのだとか。
どんな子供でも、その子の発達にピタリと合う、少し難しい作業や課題に出会えれば、
映画の子供達と同じように、異様なまでの集中力を発揮するのです。
刃物・ガラス・木製…モンテッソーリのおしごとで使うのは『本物の道具』
「おしごと」と呼ばれる活動には、さまざま道具を用います。
その際に登場するのは、モンテッソーリ教具であったり、はさみやナイフといった刃物もあれば、
水、野菜など本物の素材ばかりです。
『日常生活の訓練』を重視するモンテッソーリ教育では、本物の素材に触れることを大切にします。
水差しの水をコップにうつし替えるおしごとがありますが、私たちは、割れたら危ないから、と
プラスチック製のコップなどを与えがちです。
しかし、ガラスの水差しやガラスのコップ、陶器の器など、素材に適した扱い方を習得するために、割れる危険性があるものも、きちんと子供達に触らせるのです。
そのため、モンテッソーリ教具は、木のぬくもり感じる木製の教具が非常に多く、それがお値段にも比例する、というわけなのです。
教具の数々は、非常に考えられたデザインで、使い方なども細かなルールがあるようですが、一見すると、なにをするのか謎なものばかりです。
さらに、静かな子供達の様子を見ていると、ほんとにこれ楽しいのかな?と疑問がわいてきます。
「集中現象」やこどもの発達、発達の敏感期があること、などなどを理解していなければ
そりゃ「やばい」とか「怖い」という感想になるのは納得できますね。
「モンテッソーリ子どもの家」をご覧になっていない方は、ぜひこの映画をご覧になってください。
ほんとに楽しんで過ごしているのかな?と最初は疑問を抱きながら観はじめても大丈夫です。
子供の成長していく様子を見ていると、なぜこのような方法を取り入れているのか、
モンテッソーリ教育の理論の部分も少しずつ理解できるようになりますよ。
まずは理論を正しく知ろう。モンテッソーリってどんな教育?
そもそもモンテッソーリ教育は、マリア・モンテッソーリという女性の医学博士が
今から100年以上前に提唱したひとつの教育メソッドです。
もともとは、さまざまな障害をもつ子供達を観察するなかで発見したことを、
すべての子供たちに適応する教育方法へと確立していった、という歴史的背景があります。
ですから、「自立」を重視し、「子供は自分で自分を育てる力をもっている」という考え方が
この教育方法の大前提になっています。
そして、独特なモンテッソーリ教具が揃っていますが、現在は知育玩具として広く販売されているものもたくさんあります。
素材を大切にしているため、木製玩具が多く、お値段もはりますが、色合いもナチュラルでインテリアとしても映えるので、教具を揃えるのが趣味になっている方もけっこういらっしゃいるのではないでしょうか。
もちろん「形から入るタイプ」で教具を揃えるのも大変良いと思います。
ただ、ひとつひとつが非常に高価な教具ばかりなので、まず理論をしっかり理解した上で
取り入れていくことをおススメします。
なぜかというと、理論が理解できていれば、
「これは別のもので代用できそうだ。」「これは100均で手作りできる。」
といった、工夫ができるようになるからです。
大人の役割は、子供の『敏感期』を見極め、ひとりでできる環境を整えること!
モンテッソーリ教育の大きなポイントは、
- 子供を観察し、発達の『敏感期』を見極めること
- 大人が手出し口出しをしなくて済むように、子供がひとりで達成できるように、
環境を整えてあげること。
です。
『敏感期』というのは、子供がある能力を獲得しようとひとつのことに夢中になる時期のことをさします。
この敏感期に適したおしごとに出会ったときに、さきほどの映画にもある「集中現象」が現れます。
集中現象が現れたときが、一番ものごとを学習・吸収しやすいのです。
例えば、小さなものを指でつまむ動作を習得する敏感期が訪れた時に、
それに適したおしごとに出会えた子供は、スムーズに能力を獲得し、この敏感期を終えていきます。
その子が次に、はさみを使って紙を切りたい、という敏感期が訪れたときに、まず土台として、物をつまめる指の細かい運動ができていないと、はさみは扱えません。
ひとつ前の段階の敏感期に、適したおしごとに出会って能力を獲得できた子供は、次の敏感期にもスムーズに対応できるのです。
そして、このハサミで紙を切るおしごとに没頭させてあげるために、子供の手に適した小さなハサミと、大量の紙を用意してあげなければなりません。
そうでないと、子供はそのへんにある大切な書類もなにもかも切ってしまいかねません。
子供のいたずらこそモンテッソーリの出番!少しでも楽に長続きさせるコツ
ダメだと注意してもいろんなものを切ってしまう子供の様子を、今まで、イタズラだと思っていませんでしたか?
イタズラではなくて、これは『敏感期』だったんです。
最初はまっすぐな線。
できるようになったら曲がった線。
だんだん難しい図案。
というように、子供が満足いくまで紙を切れるように、大量の紙を用意してあげる必要があります。
これが、モンテッソーリ教具や環境を整えてあげる、ということです。
とはいえ、この環境整備は親にとって、とても大変なことでもあります。
少しも目を離せない子供、散らかりまくった部屋と格闘しながら、部屋や道具を整えなければならないのですから。
ですから、少しでも楽ができる工夫が長続きのコツになります。
家でできるモンテッソーリの工夫・手作り教具についてはこちらの記事を参考にどうぞ。
このように、まずは理論をしっかり押さえて、
自分にできる範囲から工夫しながら実践していくことをおススメします。
中には傾倒しすぎて、「こうじゃないとダメ!」と他のものを排除してしまう方がいらっしゃいます。
しかし、そうなると、親も子供も苦しくなってしまうと思います。
子供にいろんな性格があるように、いろんなメソッドが存在し、
モンテッソーリメソッドにせよ他の教育方法にせよ、必ず一長一短あります。
理論をしっかり理解し、良い部分を柔軟に取り入れていきたいものです。
まとめ
モンテッソーリ教育が「怖い」とか「気持ち悪い」とネガティブなイメージをもたれるのはどうしてなのか、おわかりいただけたのではないでしょうか。
発達の敏感期にちょうど適した課題に取り組む子供達が、異様な集中力を見せる「集中現象」の様子にばかり目が行くことで、そのような感想をもたれるのです。
子供は、つねに大声で騒いだり、走り回ったりするのが当たり前。
そのように認識している大人が、おしごとに集中している3歳や4歳ぐらいの小さな子を見て
気味が悪い、と驚かれるのも無理はありませんね。
しかし、
「敏感期を逃さないように観察をして、適切なミッションを与えてあげると、子供は喜んで自発的にミッションに取り組み、ものすごい集中力を発揮する」
という子供の特性を知っていれば、なにも怖がったり気味悪がったりすることはありませんよね。
いつもわんぱくなお子さんでも、このように集中して取り組むことができるんですから。
モンテッソーリメソッドは、100年以上たった今でも通用する、科学的に立証された理論です。
理論の良い所、悪い所をよく知って、時代にあった上手な取り入れ方をしたいものです。
なによりも、親にとっても子供にとっても苦しくならない、楽しい子育てが一番ですね!