赤ちゃんが産まれるとよく贈られるもののひとつに、ベビーベッドに取り付けるメリーがあります。可愛らしいキャラクターが回ったりオルゴール音楽が流れたりと、さまざまな商品が市販されています。
モンテッソーリでも、まだ産まれて間もない
ねんね期の赤ちゃんの玩具として、モビールが推奨されていますよね。
モンテッソーリ教育でモビールが推奨されるのには理由があり、
その裏付けとして、子供の身体の発達段階があります。
もちろん市販のベビーメリーも、モビールと同じような効果を期待して作られているのですが、
モンテッソーリ教育では、モビールにさまざまな種類があり、月齢に応じた吊るし方や選び方があるのです。
ここでは、0歳からはじめるモンテッソーリ教具のひとつ、
モビールおもちゃについて
・なぜモビールが赤ちゃんに良いの?
・モビールの種類と月齢別のおすすめ
・モビールの吊るし方のコツは成長で変わる
について詳しくお話したいと思います。
なぜモビールおもちゃがいいの?モビールの種類と時期をみきわめよう。
モビールのおもちゃは、赤ちゃんの視覚の発達にはたらきかけるおもちゃです。
まずは、少し難しいですが赤ちゃんの視力の発達についてお話したいと思います。
赤ちゃんの視覚は非常に低いというのはご存じかと思いますが、
生後2か月3ヶ月の赤ちゃんの視力は約0.01~0.02と言われています。
なかでも、「コントラスト感度」が非常に低いので、
赤ちゃんは、薄い色や淡い色を見分けることができません。
全体的に霧がかかったようなぼんやりした世界を生きているのです。
なぜ、このように視力が発達していない状態で生まれてくるのでしょうか。
それは、脳の情報処理能力と関係があります。
赤ちゃんは、お母さんの産道を安全に通るために脳の発達が未熟なまま産まれてきます。
脳が発達して頭が大きくなりすぎるとお母さんの産道を通れなくなるからです。
もし、脳がまだ未発達な状態のまま産まれてくる赤ちゃんが、
暗い子宮の景色から急に色鮮やかな世界がはっきり見えてしまったらどうなるでしょうか。
あまりの情報量の多さにパニック状態になり、脳は情報処理能力を超えてパンクしてしまいまうことでしょう。
ですから、未熟な脳に合わせるように、視力の発達も未熟な状態で、ぼんやりしか見えないまま生まれてくるというわけなんですね。
そこで、ぼんやりした視覚の世界に働きかけ、感覚機能の発達を促すおもちゃとして効果的なのが、モビールなのです。
【モンテッソーリ】0歳の赤ちゃん向け月齢別モビールの選び方
モンテッソーリ教育で推奨されるモビールにはいくつかの種類があります。
■ムナリモビール(生後すぐの赤ちゃんに)
白と黒の平面的なデザインのモビールです。
コントラスト感度の低い赤ちゃんが最初に識別できるものとして、一番コントラストが高い白と黒が使われています。生後すぐの赤ちゃんにも使用できます。
■正八面体モビール(生後2~3ヶ月頃の赤ちゃんに)
表面のホログラムが太陽光でキラキラするのが特徴的です。
赤ちゃんはキラキラするものに、より興味をもって見ようとする性質があります。
また、「奥行き知覚」といって、物の奥行きや遠近が知覚できるようになり、立体を立体として見ることができるのが生後2ヶ月~3ヶ月ごろと言われていますので、生後3か月程度からの使用がおススメです。
■ゴビモビール(生後4ヶ月頃の赤ちゃんに)
球体のモビールで、同系色のグラデーションでまとめてあるのでインテリアとしてもかわいらしくて素敵です。
色の違いを知覚できるようになるのは生後2か月ごろから発達するのですが、区別しやすい色と区別が難しい色があります。
特に青い色を知覚できるのが難しく、4ヶ月ごろにならないと青の識別ができません。
また、4ヶ月ごろには、「色の恒常性」といって、朝の光のなかで見るリンゴの赤も、夕方の光のなかで見るリンゴの赤も同じ赤である、ということがわかるぐらい色に対する視力が発達してきます。
ですから、グラデーションの色の違いが区別できる4ヶ月以降の赤ちゃんにおススメです。
■ダンサーモビール(生後4ヶ月以降の赤ちゃんに)
このモビールは人が踊っているかのような形をしていて、自然風で揺れやすいデザインです。
赤ちゃんは生まれつき、人の顔のような配置のものや、人間の形のようなデザインを好んで注視しようとする、という性質があります。
動くものをうまく知覚できる視力がつく4ヶ月以降の赤ちゃんにおススメです。
【モンテッソーリ】モビールの吊るし方。赤ちゃんの成長で変えよう
これらのモビールの吊り方にも注意点があります。
生後すぐの赤ちゃんの視力だと、
30cmぐらい離して設置するのがちょうどいいとされています。
市販のメリーのように、ベビーベッドに取りつけるタイプだと、意外に距離が遠いということに気が付かれるかと思います。
せっかくメリーをかざっても、遠すぎて実は見えていない赤ちゃんが多いのですね。
モビールやおもちゃを吊るすためのアタッチメントが、ネットでもたくさん販売されています。
ベストな距離に保てる製品を探してみるとよいでしょう。
また、最初は「見る」ことに特化したモビールおもちゃですが、
赤ちゃんの身体がうまく動かせるようになってくると、「興味をもったものに対して手を伸ばす」という行動をとるようになってきます。
そして「触って感触を確かめる」という遊び方に変わっていきます。
それに伴って、モビールの設置距離も微調整が必要になってきます。
設置したらそのまま、ではなく、赤ちゃんの反応を見ながら飾り替えをしたり、設置距離を変えたりしてみることをおススメします。
モンテッソーリは、子育てが楽しくなる魔法のメソッド。
モンテッソーリ教育の良いところは、子供の発達を基準としていて、発達に合わせてひとつひとつ積み上げていくところだと私は思います。
早期幼児教育と勘違いされる方もいらっしゃるかと思いますが、
モンテッソーリ教育は、とにかく子供の発達に忠実!
飛び級のように先取り教育をしません。
そのためには、お母さん自身が子供の身体の発達や知覚・脳の発達についてよく知ることが大切です。
発達について理解できると、お母さんの気持ちの持ちようがガラッと変わり、精神的に余裕がもてるようになるんですよ。
今まで、赤ちゃんがなぜこんなにぐずって泣き止まないのか理由がわからなくてイライラしたり、
情報があふれすぎて何が正しいのかわけがわからなくて困った経験はありませんか?
初めての子育てだとなおさら、思うようにいかないことばかりでイライラしたり、焦ったり、不安だったりで、子育てが楽しいと思えない時期がありますよね。
私も泣き止まない赤ちゃんを抱っこしながら、泣きたいのはこっちだよ・・・と思ったことがたくさんありました。
モンテッソーリで子供の発達を学び、子供を注意深く観察できるようになると、
赤ちゃんの謎行動の理由が少しわかるようになり、どのように対処したらよいかが少しずつわかるようになります。
そうすると、イライラしたり焦ったり不安になることが減り、気持ちに余裕が出てきます。
気持ちに余裕ができると、お母さんの笑顔も増えて、子育てを楽しめるようになるんです。
そう考えると、モンテッソーリメソッドは、子育てが楽しくなる魔法のメソッドだな~と思うのです。
ついつい教具を揃えることに熱心になったり、モンテッソーリはこうでなきゃいけない、という考え方にとらわれてしまったりしがちです。
でも、モンテッソーリ教育で一番大事な点は、子供をよく観察して理解し、見守ることにあると思います。
だから、モンテッソーリ流だからこうしなきゃいけない、とかではなく、
その子その子でみんな違う発達のスピードに合わせて、その子に一番ぴったりな
やり方を親子で模索していくのがモンテッソーリではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたか?
モンテッソーリでなぜモビールが推奨されているか、
赤ちゃんの視覚の発達と照らし合わせながら、いろいろなモビールをご紹介しました。
手作りされる方も多いようですが、ネットでも販売されているものがありますので機会があれば探してみてください。
そして、教具が特徴的なのでモンテッソーリ教具に目を惹かれがちですが、
ぜひモンテッソーリ教育の一番大切な考え方の部分にも注目してほしいなあと思います。
子供の発達をよく観察して、子供に対する理解を深めると、
きっと笑顔いっぱいの楽しい子育てができると信じています。