モンテッソーリには優れた教具がたくさんありますが、かならずしも教具を揃えないといけないというわけではありません。
家にあるもので代用したり、なにも準備しなくても、毎日の家事のなかにも絶好の「お仕事」がたくさんあるのです。
例えば、ひもを結ぶことにはまっている子には、
毎日のお弁当づつみを家族全員分お願いするのもよいでしょうし、
毎日脱ぎ着するパジャマを甚平に変えるのもよいでしょう。
それだけで、立派な結ぶというお仕事をすることになるんですよ。
モンテッソーリのお仕事【基本編】4歳さんにおすすめのお仕事5選
我が家でも実践した、4歳におすすめのお仕事を5つご紹介します。
やり方についても詳しく書きましたので、ぜひ参考にしてみてください。
アルバムづくり
ハサミを思う存分に使えるお仕事です。
撮りためたたくさんの写真と、色紙に星型やハート、吹き出しなど、
いろんな形をマジックで書いたものを用意します。
子供は、自由に写真のなかの自分の姿だけをハサミで切り取ったり、
色紙の形を切り取ったりします。
そして、それらをアルバムに配置しながら自分だけのオリジナルアルバムを作っていきます。
ギザギザになったり、じょうずに切れなくてもOK。
口出しせずに見守ってあげましょう。
文字なぞり
ひらがなやカタカナに興味が出てくる年齢の子供たちのために、
モンテッソーリでは昔から「砂文字」という教具があります。
この砂文字をうまいことデジタル化したのが、現在よくある「文字なぞりアプリ」です。
我が家は、ひらがななぞり・カタカナなぞり というアプリを使っていました。
書き順のお手本動画も見られて、大きくはみだしたり書き順が間違っていると、
ぶっぶーという音で知らせてくれます。
上手に書けると花丸をつけてもらえて、次に進むことができます。
とてもシンプルで使いやすいアプリで、子供も大好きだったので、非常におススメです。
生き物のお世話
生き物を飼っている家庭は、その餌やりやトイレの片付けなどが最高の「お仕事」になります。
我が家はインコを飼っていますが、水換え、餌入れ、ケージの新聞紙取り換えなど
作業のなかには、「注ぐ」「よそう」「拭く」「畳む」という動作が含まれます。
手や指を器用に使えるようになることは、自信につながります。
日常生活の動作の練習が、立派なモンテッソーリ流お仕事です。
なにより生き物とのふれあいやコミュニケーションが楽しいですよね。
生き物を飼っていない場合は、観葉植物やプランターのお花や野菜のお世話も最高のお仕事です。
お風呂掃除
子供は水を使うお仕事が大好きです。
また、なかなかお風呂に入りたがらない子にもお風呂掃除のお仕事は最適です。
スポンジに泡をつける。
浴槽をごしごしと洗う。
シャワーで泡を洗い流す。
手や指、そして身体全体をじょうずに使えるお仕事です。
最初は、お母さんがお手本を見せてあげて、洗剤の量はどれぐらいが適切なのか
教えてあげてくださいね。
放っておくと、面白いのでどんどん泡を作って、
すぐに洗剤の容器が空になってしまうので要注意です(笑)
卵料理
卵割りは子供が夢中になるお仕事のひとつです。
最初はなかなかうまく割れないかもしれませんが、
お母さんやお父さんがスーパースローモーションで割り方を実演してあげることをおススメします。
モンテッソーリには特徴的なお手本の見せ方があります。
それが、「黙ってスーパースローモーション」です。
耳からの情報と目からの情報を同時に与えられても、子供は頭に入ってきません。
ですから、目からの情報だけに絞って、さらにわかりやすいようにゆっくりゆっくり提示してあげるのです。
このやり方は、どんな所作を教える際もとても役に立ちますよ。
卵が割れたら、最初はスクランブルエッグから始めるのがおススメです。
スクランブルエッグが作れるようになったら、目玉焼き。
目玉焼きが作れるようになったら卵焼き、といふうにレベルアップしていきます。
卵焼きになると、割る→溶く→味付けする→巻く という難しい動作の連続です。
必要な道具の段取りを考えることも重要になってきます。
これがじょうずにできるようになると、ものすごい達成感と自信がうまれますよ。
我が家では、2歳から「卵まぜ」、3歳で「卵割り」、
4歳で「スクランブルエッグ」、5歳から「卵焼き」の順でレベルアップしてきました。
ちなみに目玉焼きはあまり好きではなかったために省かれましたが。
卵料理は、何歳になっても是非おススメしたいお仕事です。
モンテッソーリのお仕事【応用編】4歳さんは本格お店屋さんごっこ!
小学校に上がる前に、もっといろいろお勉強をさせなきゃ、と焦らなくても大丈夫です。
なぜならモンテッソーリ教育の背景には発達心理学の裏付けがきちんとあるからです。
その子供の発達に合わせた学びこそが、今後の能力を伸ばす土台になるという考え方です。
土台となる能力が育っていないうちに、それより高度な力を育てようとすると、
そのときはできたように見えても後で別の問題が出てくることがあるからです。
基礎工事をおろそかにして2階3階を建てていくと、耐震機能に問題が出てくるのと同じ事ですね。
いまは、就学前の土台づくりをしているところですから、
五感をたくさん使って、身体をたくさん使って多くの体験をさせてあげることをおすすめします。
さきほどご紹介した「お仕事」のいろいろな要素がたっぷりとつまった、
応用編をひとつご紹介したいと思います。
これはモンテッソーリ教育の要素だけではなく、レッジョエミリアアプローチの要素など、多くの教育方法の要素がつまった素晴らしい取り組みだと思い、我が家でよく実践しているものです。
それが、「お店屋さんごっこ本格派バージョン」です。
ごっこ遊びから少しレベルアップして、子供が本当に商品を作り、
お店に必要なものを準備しましょう。
実際にお金のやりとりをして物を売る、という「お仕事の応用編」で、
親子で一緒に楽しみながら取り組めますよ。
4歳でできそうなのは「おにぎりやさん」などはいかがでしょうか。
まずは、商品をつくるところからです。
おにぎりづくり。それだけでひとつの「お仕事」の実践になりますよね。
おにぎりなら、サランラップだけセットしてあげれば、
梅干のおにぎり、こんぶのおにぎり、ふりかけおにぎり、の3種類ぐらいは作れそうです。
ちっちゃくたって不格好だって全然OKです。
このお店には規格外や売れない商品はありませんから。
そして商品が準備できたら、そのほかになにが必要なのかを考えます。
まずは、お店の看板が必要ですね。
段ボールとクレヨンなどでお店の看板を作りましょう。
普段から文字に興味を持っている子にとっては文字を書く良いチャンスですし、
まだ興味を持っていない子はおにぎりの絵だけでも素敵だと思います。
これを機会に、「おにぎりって字はどう書くの?」と興味が出てくるかもしれません。
また、店員さんの帽子が欲しい、と思った子は、画用紙で帽子を作るかもしれません。
何種類か商品があれば、ポップや値札などもあったほうがいいですよね。
それらも画用紙などを用意してあげましょう。
くれぐれも注意してほしいのが、店主は子供だという点です。
看板やポップなど、ついつい見栄えのするものを作りたくなりがちですが、
実際の作業にうつったら親は手を出さずに見守ってあげましょう。
値段ですが、4歳児であれば一律の値段に固定をして、
コイン1枚とおにぎり1個が交換できる、というルールでよいと思います。
お金に少し興味がでて10円玉とか100円玉などがわかる子供であれば、
「1つ10えん」と値札を作ってもよいかもしれません。
お客さんとのやりとりのなかで、
「梅干おにぎり1個とふりかけおにぎり2個ください。」というお客さんの言葉を聞いて、
合計で3個だからコインを3枚受け取らないといけない、
といったような数の理解が深まる良い機会になると思います。
我が家の場合は、ちゃんと本物のお金で行い、利益はちゃんとお小遣いになります。
店主だった子供たちは、売上金を手に駄菓子屋でお菓子を購入しています。
教具は揃えなくてもOK! 毎日のお手伝いも立派な「お仕事」
4歳ともなると、ひらがなや数を教えなきゃ、とか幼児塾に通わせた方がいいのかしら、
などと早期教育のことについて考えがちです。
しかし、モンテッソーリでは、発達の基礎を大切にします。
建物の基礎がきちんとできあがっていないまま2階や3階をつくると建物はグラグラと安定しなかったり崩れてしまったりします。
それと同じことで、子供の能力を伸ばすためには、
発達の順を追って着実に力を積み上げることが大切だとモンテッソーリでは考えます。
モンテッソーリ教育の用語のなかに「お仕事(おしごと)」という言葉があります。
これは、大人が毎日行うお仕事のことではなく、
その子の現在の発達に合わせた今一番やりたい事を選んで主体的に取り組むことを「お仕事をする」と呼んでいます。
子供にとっては遊びの延長のようなもので、
「お仕事」にハマると、おもちゃなどで遊ぶのと同じくらい没頭して取り組むことがあり、集中力も養われていきます。
ですから、慌てて早期教育を詰め込むのではなく、子供ひとりひとりの発達のスピードを見極めて、今その子が一番集中して取り組めるお仕事をやらせてあげることが何よりも大切なことなんです。
いま、子供が何に興味をもっているのか、子供が繰り返し行う行動や言動などを
注意深く観察してみることをおすすめします。
すると、「ああ、今、この子は紐を結ぶことにはまってるんだな」などということに気づけるようになります。
紐を結ぶ、という動作は、指の器用な動きを習得しなければできるようにはなりません。
その子は、いま細かい指の動きを学んでいる真っ最中なので、
そういう時は紐を結ぶという「お仕事」を与えてみるのがベストなのです。
まとめ
4歳の子育てってちょっとした壁にぶちあたりませんか?
物事への理解力もついてきて、嘘をつくことも増えたり、言葉も達者で屁理屈を述べたり・・・。
イヤイヤ期を乗り越えたと思ったのに、また今度はうまくいかない・・・そんな気持ちを抱えているのはあなただけではないはずです。
実は私もそうでした。
そんな時に、モンテッソーリ教育の考え方はとても役にたち、
こうしなきゃいけない、こうあるべきだ、などと思っていた子育てがスッと楽になったように感じました。
モンテッソーリ教育というと、なんだか難しそうだな、とか、専門の園に通わなきゃいけないのかな、などと思ってしまいます。
しかし、モンテッソーリの考え方を知ると、
非常にわかりやすく、今日から家で実践できるものがたくさんあります。
むしろ、家庭で営む日常生活のさまざまな事こそが重要という考え方が含まれているのです。
今回ご紹介したようなお仕事をいろいろやってみると、4歳は大人が思った以上に難しいことがたくさんできることにびっくりさせられますよね。
環境を整えてあげれば、子供は日常生活のなかで多くの「トライ&エラー」の経験や「成功体験」をすることができます。
これらの体験を重ねることで子供は自分に自信がつき、次への意欲や自己肯定感へとつながっていくんですね。
今日からさっそくモンテッソーリ流お仕事を実践してみてはいかがでしょうか。